飛行機に乗るのは不安ですか?大きな鉄の塊が浮いてるし、事故が起きたらほぼ100%死ぬだろう。。。と。色んな不安が付きものの飛行機ですが、世界一安全な乗り物と言っても過言ではありません。
この記事を読むことで、きっとそんな不安は解消されると信じています。安全度の高さ、事故率の低さ、飛行機に携わる人々の努力をここではご紹介します。
ぜひ最後まで読んで飛行機の安全性を知って、安心して飛行機の旅を楽しんでいただければと思います。
飛行機の安全とは
飛行機の安全は過去に起こったたくさんの事例とたくさんの人たちの努力によって培われた技術、経験によって日々積み重ねられてきています。
飛行機自体は大幅に進歩してきましたし、ソフトウェアである人はもちろんのこと、それらを支える航空システムも安全性を高めてきました。
より安心して飛行機に乗ってもらえるように飛行機の安全性について具体的にお話ししていきたいと思います。
飛行機の事故率(アメリカの統計データ)
まず安全性を客観的に見てみましょう。アメリカにおける2013年から2022年の10年間に絞ったデータをここでは示します。
上の図はNTSBのHPに掲載しているデータです。このグラフはPart121 Air Carriersの統計です。Part121 Air Carriersとは下記に書かれているようにアメリカに籍を置く一般的な航空会社のことです。
Air carriers authorized to operate under a Part 121 certificate are generally large, U.S.-based airlines, regional air carriers, and all cargo operators.
https://www.faa.gov/hazmat/air_carriers/operations/part_121
アメリカの航空会社の事故の全体観
まず全体の事故に関しては2013年から2022年の10年においては数に大きく変動はありません。大体1年あたり20件前後です。2019年までは航空旅客も右肩上がりだったので事故も増えていっているイメージです。
2020年からはコロナにより数をガクッと減らしていますが、それも需要が戻ってきているので事故自体もまた数を戻しています。
死亡事故に関しては率はほぼ横ばいです。件数としては10年で6件起こっています。件数だけみると2年に1回は起こっていますので多いなと思われる方もいるかもしれません。
航空事故のそれぞれの確率に関しては次で見ていきましょう。
死亡事故以外の事故
死亡事故以外の事故を見てみましょう。まず事故率に関しては以下の図を参照に出してみます。2022年を例にしてみますと10万時間につき0.112回の事故率です。10万時間を単純に日にち換算すると4166日と4時間=約11年と5ヶ月。
これを元に計算すると1回事故に遭遇するためには115年間毎日24時間飛行機に乗ってあたるかどうかです。往復で約15時間ほどの東京ホノルル間を例に説明すると、約6万6700回往復、週一度往復すると約1282年かかる計算です。
これでも事故率としては低いと思いますが、死亡事故以外も含めての話です。ちなみに日本の自動車事故は2022年には約30万件。圧倒的に事故に遭う確率としては自動車が高いですね。
死亡事故
死亡事故はと言いますと、上記のグラフで10万時間あたり0.006回となっています。こちらも計算してみると、毎日24時間飛行機に乗り続けて190年に1回の確率。先ほどの東京ホノルルの往復で計算すると約11万1千往復。週一の往復で約2140年かかります。
パーセントで出すと0.0004%!隕石に当たって死ぬ確率と同じだそうです。出したのはあくまで概算ですが飛行機事故によって死ぬ確率というのはかなり低いです。事故率だけで見ると非常に低く安全度が高い乗り物と言えるでしょう。
では飛行機は怖いというイメージはなぜ?
非常に低い確率でしか起こらない事故ですが、なぜ飛行機は怖いという人が多いのでしょうか。それは飛行機の事故のインパクトの大きさから来るものだと思われます。
特に最近では2024年1月にJALと海上保安庁の飛行機の事故がありました。その時の映像は飛行機が燃えていく様子や、機内の緊迫した雰囲気の映像など自分が遭遇したらと思うと本当に怖いと思うような映像ばかりでした。
また、飛行機の事故は、空を飛んでいる、速度が他の乗り物と比べて段違いに速いこともあり、死亡率はぐんと高くなります。このことからも怖いというイメージが付きまとうのだろうと思います。
飛行機事故の原因
飛行機の事故の原因には様々なものがあります。ですがここ数年はシステムや飛行機も進化してきているため、基本的にはヒューマンエラーによる事故が多くなっています。
以下の図は事故原因毎のグラフを示したものです。圧倒的に多いのは飛行中の揺れによる怪我です。飛行中の揺れはパイロットでも正確な予測が難しいものもあります。完全に防ぐことは難しいですが、ベルトサインが点灯しているときに限らず、席についている時はいつでもシートベルトをしていただくことで防げる事故も多いと思います。
死亡事故においてはLOC-I(Loss of Control in-Flight)、CFIT(Controlled Flight into Terrain)がインパクトは大きく、しかもヒューマンエラーに起因することです。
ちなみにLOC-Iは飛行中に何らかの原因でコントロールを失い飛行機を墜落させてしまう状況を言います。CFITはパイロットが完全にコントロール下に置いている飛行機を地表に墜落させてしまう状況を言います。
2013年から2022年で起きたLOC-IとCFITに事故は3件です。ナショナル・エアラインズ102便墜落事故、UPS航空1354便墜落事故、アトラス航空3591便墜落事故です。もし興味があれば見てみてください。
飛行機事故への対策
上記でも挙げた飛行機事故は主にヒューマンエラーによって引き起こされています。そういったヒューマンエラーを防ぐために、さまざまな対策や訓練、システムが各国、各航空会社でなされています。
特に航空会社ではCRM(Crew Resource Management)やTEM(Threat and Error Management)という考え方を取り入れて訓練をしています。
CRM(Crew Resource Management)とは
CRMとは、安全で効率的な運航を達成するために、すべての利用可能な人的リソース(航空機乗組員、客室乗務員、運航管理者、整備士、航空管制官等)、ハードウェア及び情報を効果的に活用するという考え方です。
利用できるリソースについては基本的にSHELL modelで表されます。Livewareに関しては2つありますが、真ん中は自分自身を表しています。
パイロットは安全のためにはありとあらゆるものを使って安全を担保しなければなりません。そのために使えるリソースは全てを有効活用しなければなりません。
現在では航空業界全体でこのCRMの考え方が広まっていて、このための訓練も行われています。これにより安全度をより一層高めています。
TEM(Threat and Error Management)とは
TEMとは、少しでもエラーを起こす可能性があるスレットを抽出して、問題が発生しても早期発見・修正できるよう対策をマネジメントし、運航乗務員間で事前共有することで安全性を高めるという考え方です。
引用:https://skywardplus.jal.co.jp/story/captain/takashiohara/
まずthreatとerrorについて詳しく説明してからその後にその対処について説明していきます。
Threatとは
気象や機材の不具合、滑走路や誘導路など空港のレイアウト、地形、定時性を確保するためのタイムストレスといった「リスクを増大させる可能性があるもの」を指しています。
その範囲は多岐にわたりますし、時間帯や曜日、季節によっても変化はさまざまなので、その時々に応じた対策も必要になります。
Error
航空管制の周波数を間違えるなどの「間違った行動」が思い浮かびますが、意外にも「何もしないこと(無行動)」も含まれます。
「人間の能力には限界があり、エラーをなくすことはできない」とされていて、どれほど訓練を積んだパイロットでもエラーを起こす場合があると考えられています。
そのエラーの可能性を事前に考えておき、そのための対策を取っておくことでより安全度は上がります。
TEMの具体例
ここからは1つ具体例を用いて説明します。
航路上に存在する台風というthreatに対し、進路を変更して揺れを避けたとします。台風の雲に意識を集中したために、一時的に航空管制官の指示を聞き漏らす場合もあるかもしれません。この聞き漏らすというのは無行動ですがerrorになります。
このような状況を避けるため、事前に機長と副操縦士で状況認識を共有する必要があるのです。状況認識を共有しておくことで、threatへの対応がお互いの考えを出し合ったより良いものにすることもできますし、想定外の対策になりづらいのでerrorにもなりにくいという好循環が生まれます。
参考:https://skywardplus.jal.co.jp/story/captain/takashiohara/
飛行機の安全を守る人たちとその取り組み
飛行機の安全を守るために様々なところで多くの人が対策に取り組んでいます。ここでは大きく3つの立場に分けて説明します。
パイロットの訓練と技術
パイロットは毎年、路線審査とシミュレーター審査があります。それぞれの審査の前には口述審査もあり、最近の改訂などについて問われます。この審査に通らなければもちろんラインで飛ばすことはできません。
もし落ちてしまったら付加訓練を受けて再度審査をします。その付加訓練や審査は厳しいもので、次に落ちてしまうと戻れなくなってしまいます。ですのでパイロットは審査や訓練前にはイメージトレーニングをしっかり行ってから臨みます。
また、審査とは別にシミュレーターの訓練もあります。これは一定の技量を維持するためのものでもあります。この審査や訓練を経て、パイロットは緊急時の対応や技量の維持を行っています。
航空会社の安全管理
各航空会社は安全を第一優先とし、安全管理を徹底するための部署を設けています。多くの会社がその部署を中心にSMS(safety management system)を構築しています。
SMSとは安全に係るリスクを管理するための仕組みであって、必要な組織体制、責任、方針及び手順を含むものを言います。
さらに航空会社内部だけではなく、第三者の意見も積極的に取り入れ、現在の運航における強みや弱みを知り、対策を打っています。
管制官の安全管理
飛行機が安全に飛行できるように、レーダーや航空無線などを使って、地上からパイロットに情報や指示を送っているのが、航空管制官です。
ここではわかりやすい飛行場管制業務について紹介します。飛行場内の航空機、滑走路、車両などを監視し、航空機に離着陸の許可や方法を指示するが主な仕事です。
彼らの仕事は非常に忙しく、ほんの数秒目を離したり、1つ指示を間違えただけでも大惨事になる可能性のあるものです。特に日本一の離着陸数を誇る羽田空港では1分間に数機もの飛行機が離着陸を行います。
そんな中でも安全に飛行機を誘導するためにも、管制官は訓練を積んでいます。またその管制官を補助するためのシステムも多くあります。詳しくはまた別の記事でご紹介したいと思います。
【まとめ】飛行機は安全度が高い乗り物!
このように飛行機は色んな人や組織の努力、今まで起こってきた事故を踏まえてシステムが構築され、現在まで進化を遂げてきました。
もちろん事故が0になるのはとても難しいことですし、きっとこの先も人間が関わっている以上なくすことはできないとは思います。ですが、限りなく0に近づけるように飛行機に関わる人々は日々訓練など行っていますし、システム構築のために知恵を振り絞っています。
飛行機が怖いという気持ちはとってもわかりますが、プロフェッショナルな人々の手によって支えられているという非常に安全度の高い乗り物であることも間違いなく事実です。
ぜひ今まで怖くて乗れなかったという人も、この記事を読んで安心して飛行機に乗っていただくことができればとても嬉しい限りです。
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